炎症って何?認知症を予防するために知っておきたい炎症のこと認知症を予防する上で、その原因を知ることは大切です。そのなかでも、大きく関わっているのが「炎症」という体の防御反応です。私たちは、道ばたで転んで膝をすりむいたとき血がでて赤くはれたり膿がでたりします。それは、炎症が起きているためにおこる体の反応です。大昔私たちの先祖は素足で歩いていたためとがったもので足裏を傷つけたり、生きるために狩りをして病原菌だらけの生肉を食べたりしていました。それでも生き延びて来られたのは、強い炎症反応によって生命を脅かす感染から守られてきたおかげといえます。その意味を理解すると炎症が起きると言うことは、悪いことではなく正常に免疫機能が働いていることになります。私たち先祖が生き延びてきたのは炎症のおかげといえるのですが、現代の食生活や生活習慣が炎症によって心血管疾患や関節炎、認知症を引き起こす原因になっています。慢性炎症がさまざまな病気の元凶となる!炎症は、「急性炎症」と「慢性炎症」いう2種類の炎症があります。急性炎症とは、細菌やウイルスへの感染や外傷などによって起こる炎症です。風邪を引いて熱が出たり、怪我をして赤く腫れたり痛みが出るのが急性炎症です。慢性炎症とは、何度も炎症が繰り返されたり長い間炎症が続いたりすることを言います。糖尿病やぜんそく・花粉症・ガン・アルツハイマー病などの認知症が、慢性炎症です。炎症が長引くと言うことは、炎症を引き起こしている原因が解決されていないこととなりそれがさまざまな病気のもととなります。慢性炎症が起きるしくみ炎症は怪我をしてウイルスが体に入ってきたときだけではなく、病原体や化学物質などが体内に入ってきたときにも起こります。ようするに私たちは、常に炎症を起こして病原菌と戦っていると言うことになります。私たちが病原菌と戦うときに働くのが、免疫システムです。この免疫システムのおかげで私たちは、病原菌が入ってきても体に大きなダメージを負うことはありません。病原菌との戦いが長引いたり激しくなったりしても、免疫細胞がうまく働いてくれさえすれば体は元に戻ります。しかしさまざまな原因で、免疫細胞をコントロールするメカニズムが異常を起こしてしまうことがあります。慢性炎症の原因は老化?慢性炎症が起こるしくみは、さまざまです。では、どのようなときに、免疫細胞をコントロールするメカニズムに異常が起こるのでしょうか。まず、免疫細胞の老化によって慢性炎症が発生します。免疫細胞として大きく貢献している細胞に、「マクロファージ」という免疫細胞があります。この細胞は、体内に入ってきた病原菌やウイルスまた死んだ細胞をパクパクと食べてカラダを守ってくれています。マクロファージの「マクロ」は「大きい」という意味で「ファージ」は「食べる」という意味があるそうで、別名「大食い細胞」と呼ばれているそうです。しかしこの頼もしいマクロファージも、私たちの体が老化をすればマクロファージも老化をしてしまいます。そこでマクロファージの機能が低下をすることにより、病原菌やウイルス・死んだ細胞を食べ残してしまい炎症が起こってしまうのです。また、蓄積した脂肪が炎症を誘導することもあります。私たちは加齢により、皮下脂肪に脂肪をためるのが困難になります。そこで行き場所を失った脂肪が内臓脂肪としてためられたり肝臓や筋肉、骨髄などにためられたりして炎症を誘導してしまいます。さらに閉経などによるホルモン濃度の変化も、慢性炎症が誘導されます。たしかに、50代にさしかかるころから急に病気が増え始めたりなんだか肌のつやがなくなったりと感じる方は多いと思います。それは、慢性炎症が大きく関与している可能性があります。日常の些細なことで慢性炎症は抑えられる慢性炎症の原因が老化だと言われても、老化は避けては通れません。そこで大切なのは、できる限り慢性炎症が起こらないようにすることです。炎症が起こらないように気をつければ、慢性炎症のリスクを最小限に抑えることが出来ます。炎症の原因を排除する慢性炎症の原因はさまざまですが、慢性炎症がおこる原因を排除すれば防ぐことができます。①牛乳やヨーグルトなどの乳製品を控えめにする ②小麦粉(ラーメン・パスタ・パンなど)に含まれるグルテンを避ける ③糖質(砂糖・甘い果物・ご飯など)を控えめにする ④歯周病や口腔内細菌に気をつける ⑤飲酒を控えめにする ⑥喫煙習慣をやめる ⑦肥満にならないように気をつける ⑧ストレスを回避する ⑨リノール酸(紅花油・コーン油・大豆油など)を取り過ぎない 炎症を抑える栄養素を取る慢性炎症の原因を排除すると共に、炎症を抑える栄養素を取り入れるのも効果的です。①EPA・DHA(動物由来のオメガ3脂肪酸)をとる ②αリノレン酸(植物由来のオメガ3脂肪酸)をとる ③ビタミン・ミネラルをバランス良くとる ④プレバイオティクス(腸内細菌が喜ぶ食材を食べる)とプロバイオティクス(腸内フローラを整える)を取り入れる慢性炎症は脳に飛び火をする!では、慢性炎症と認知症はどのような関係があるのでしょうか歯周病や口腔内細菌と認知症の関係細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患に、歯周病という歯の病気があります。歯周病は歯の周りの歯茎(歯肉)や歯を支えている骨などが溶けてしまう病気です。ただこの歯周病による口腔内炎症が、血液にのって全身で炎症を引き起こすことがあります。亡くなったアルツハイマー病患者の脳から「口腔内細菌が発見された」という報告もあるそうですので、単なる歯の病気だと安易に考えると取り返しの付かないことになる可能性があります。リーキーガット(腸漏れ症候群)と認知症の関係腸壁の炎症により、腸粘膜細胞の結合が弱くなる場合があります。腸には、食物から栄養を吸収して血液に乗せて全身に送るという重要な役割があります。炎症が起こると腸粘膜細胞の結合が弱くなり、腸漏れ症候群(リーキーガット)を起こしてしまいます。その結果腸粘膜細胞の隙間からさまざまな有害物質が侵入し、血液に乗って脳や体内の至る所へ運ばれてしまうのです。慢性炎症を抑えれば認知症は予防できる!このページでは、認知症にも大きな関わりのある「炎症」について解説させていただきました。炎症反応そのものは、傷を治そうとするために働いているものなので悪いことではありません。しかし、炎症が長期化するとさまざまな問題が起こります。とくに、免疫細胞も私たちと一緒に歳をとり思うように働いてくれなくなります。慢性炎症を起こす原因をできる限り排除し、炎症を抑える栄養素をしっかり取り入れて慢性炎症を起こさないようにしましょう。